SHIROBAKO 21話でずかちゃんはなぜ首を振ったのか
相変わらずこの雑談となりますが、いやこのアニメSHIROBAKO、見てるといろいろ思うことはあるんですが「まあ考えが熟すまで…」「日曜のBSでやるまで待つか…」などといいつつプリパラとかプリンセスプリキュアとか見てるといつの間にか一週間ですね。
ずかちゃんの行動
21話では、声優の卵ずかちゃんが行ったある行動について軽く話題になっているようです。
行動というのは、「なべP、他社(ザ・ボーン)の社長らに宮森がずかちゃんを紹介しようというところで、ずかちゃんは首を振ってそれをそっと制する」というもので、セリフを書き起こすと以下のようになります。
「はい、おいちゃん」(ずかちゃん宮森の前にビールを置く)「ありがとう!」「なに、知り合い?」「あーはい、彼女はせい…」(ずかちゃん宮森の肩に手を置き首を振り)「ごゆっくり」
これ見ていて、ずかちゃんを紹介しようとする宮森に、私も直感的に「それはやめたほうが」と思ったんですよね。でもなぜかはよくわからなかった。そこで、どうして自分がそう思ったのかちょっと整理してみたい。一応原因のありかを軸におおまかに分類すると以下になります。
- ずかちゃん側の事情
- 宮森に原因が
- おっさんたちその他
ずかちゃん側の事情なのか
ずかちゃん、坂木しずかさんはここまでのところ、オーディションには2回落ち、ガヤでは思うように力を出すわけにもいかず、演劇をやってみたりキグルミに入って機転を利かしたりしてはいますが、結果としてまあ報われてない。
まあ、わたくしどもも声優として成功するのはそうそう簡単なことじゃないだろう、と一定の理解を認めつつ、しかしあと3話しかないんだぞどうするんだ、という焦りがあります。われわれが焦ってどうするんだと。焦るべきなのはずかちゃんお前じゃないか、と。
そんななかでこの行動。「甘いよ」と。「どんなチャンスも食いついていけよ」と。なりふり構わないハングリーさが欠けていると。厳しいご意見が当然ございます。
かいがいの : (追記)SHIROBAKO 21話 「クオリティを人質にすんな」 海外の感想
拾い出すと、ずかちゃん行動については概ね次のような解釈となっているようです。
- さほど立派ではない経歴を恥じた
- 誰の助けも借りずに自分の力で仕事を獲得したかった
- 諦めてしまった
1、確かに声優と紹介されたら、その次に「どんな作品に出てたの」と聞かれる可能性は高い。「いえ、まだ…」「なーんだ、そりゃ声優ですってほどのことはねえだろ」などと、ガサツな酔っぱらい、いやベテラン業界人ならではのヒトコトがあるかもしれない。傷つくのを恐れたんでしょうか。
でもまあ、「まだ卵だけどね」「ひまだし」と仲間内では平気でぶっちゃけるずかちゃんですし、メインメンバー5人の中で見れば出遅れていますが世の中で見れば声優志望者はたくさんいます。あまりその点に関してナーバスというわけでもないのでは。
2が一番わかりますね。コネよりプライドを取った、実力でなんとかしたかった、と。だからこそ、「いまさら実力やプライドじゃねえだろ」という意見になってくる。でもこれも、もしコネが有効な手段だとするなら、べつに今回に始まったことじゃないんだよね。宮森さんにもっと前から頼み込んで動くべきだったし、逆に宮森も友達のためにとっくに尽力していておかしくない。
わたくしはここで大きな勘違いをしているのではないかという気もしてきました。コネを利用して、というけど具体的にどうするんだ?オーディションなしで採用される?
すでに監督らにご指名されるほど有名であったらそれもありでしょうが、さもなければそれこそ「仁義なきオーディション会議」のときに批判された「政治的キャスティング」になっちゃいそう。
あんまり宮森にできることって、なさそうな気もするんですが、どうなんでしょうか。そういえばコネといえば縦尾先生がいた。そのコネでお芝居を見学したりしているわけで、なんかやっぱり制作進行やデスクから監督や音響監督に…と攻めるより声優業のコネが正攻法だし下手に悪印象を与えるより良いようにも思えます。
このあたり、もしかしたらアニメ製作陣としては常識的な感覚であるため説明が漏れており私たちがそのギャップでもやっとしているのでしょうか。
3、諦めた。うーん、それはないと思いたい。宮森たちにとってはどんどんドーナツの誓いからの脱落であって彼女たち5人の物語的には大問題ですね。演出としてもっと切ない顔させて欲しいしその「重大な秘密に気づかない宮森」をクローズアップしても…と思ってしまいます。
ただ、「声優を続ける気がない」というのは現実的にはありといえばありです。
逆に、楽観的に考えてみてはどうか。宮森がそこでがんばってもらわなくてもいいくらい、「ずかちゃんはもうどえらい仕事が決まりつつある」
今は守秘義務で黙ってるけど。梅ブーアニメ化とか。
もうひとつ、「居酒屋店員としてのプロ意識」 というのも考えられなくもない。でもこれとてじゃあ客の一人に「おいちゃん」と話しかけるだろうか。もっとビジネスライクにしても良さそう。
宮森のためなのか
ずかちゃんの事情ではなく、宮森を気遣ったとは考えられないか。これにはずかちゃんが、「おいちゃんがよそのアニメ制作会社の人間に呼び出されている」という状況を把握していることが前提になります。まあ、それは会話を聞いていなくてもその場で判断できるか。
そうでなければ、「あ、おいちゃんだ。……なにこのおっさんたち」という形になりますね。ああ、そう考えてもいいのか。あれは事情は把握してないけど、自分を誰かに声優として紹介しようとするおいちゃんに
「よせやい」
ぐらいの、「一般人には、フッ、そういうのは黙っておくものよふふん」ぐらいの制止だった……。違いそう。
状況が見えてた上で遠慮する。この場はあたしがでしゃばる舞台じゃない、おいちゃんがまずコネを作ろうと頑張るところだ、と。この場合は若干の自負も伺えますね。私が出て行ったら話題持ちきりになっちゃうしおいちゃんに悪いじゃなーい。いやーずかちゃんそれはどうだろう…。
それに、宮森さんがなにか仕事の依頼とか、頼み事をしているようには見えないでしょう。むしろ無理やり連れて来られてやりにくそうにしているわけで、「それじゃ私はこれで」ごゆっくりーはやや薄情かもしれない。助け舟を出しても良かった。
やっぱりもう少しシビアな話として、私という微妙な立場の声優を好意で宮森さんが無理やりねじ込んでくれた場合の、宮森さんに対する業界の信用が低下するおそれは。これはずかちゃんに実力があるないに関わらない話で、そういうことをしてもらいたくなかったのではないか。それに、そういう話になるとザ・ボーンの社長、急に真顔になって怒りそう。「偉くなったもんだなおめえ」とか。
おっさんたちその他の理由?
ずかちゃん、宮森の立場などとは関係のない、全然違う理由はないか。いつもこのおっさんたちはこの店に現れて暴れてまったく記憶がない、とか。
「いまそんな話をこのひとたちにしても無駄」
とか。
あるいは、先ほどずかちゃんはすでに仕事が決まってるのでは、という案を書きましたが、実はザ・ボーンの作品のオーディション待ちなので特に彼らに今接触するのはまずい、とか。
すでに以前似たような形で紹介されてうまくいかなかった、とか。
ここまでくると、もう想像の上に想像を重ねてるようで、あまり当たる気もしませんが…どうもこの、なんとなく「これでは?」と思うものがあるものの、もやもやするのはまだこの回では語られていないことがあるのかもしれませんね。
実は平岡の過去に関係が?
SHIROBAKOでは、多分意図的なところも多々あるはずだと思うんですが、対比が多い。アマチュアのアニメーション同好会とプロの武蔵野アニメーション、とか、人が集まってくる本田さんと人望がない平岡とかね。
思い返すとこの回では平岡と専門学校で一緒だった社長、なんて名前だっけ、あのひとが出てきていた。そういう「仲間」、グループをいくつか並べてみると
- 宮森たちアニメーション同好会
- 武蔵野アニメーション
- 若き丸川社長の武蔵野動画
- 矢野先輩や平岡の専門学校仲間
それぞれ、目標を持って突き進んでいたり、がむしゃらに進んでここまで来たり…現状は様々ですが、平岡たちのコミュニティに何が起こったのか、どうして平岡はあんなんなっちゃったのか。そのへんが語られていない。
これとずかちゃんの行動、そして「まだ語られていないなにか」…。これらをつなぐとしたら、
「平岡は、かつてこのときの宮森と同じように誰かを推薦しようとして(もしくは自分自身を強引に売り込もうとして)失敗した」
という可能性はないでしょうか。平岡の「ちゃんと仕事してんのにチャンスもらえない人間がどれだけいると思ってんだ」というセリフが引っかかってるんですよね。チャンスを与えて欲しかったのに、与えてもらえなかった、という意味の言葉ですよね。
あと3回しかないんで、どこまで平岡を掘り下げるのかわからないし、どうも、ああ、日が変わってしまった、MXではすでに今日が放映日になってしまった。宝くじみたいな当たるか当たらないかの話になってしまいましたが、ちょっとこのへんが気になるポイントとして、放映を待ってみたい。
そういえばちょうど今月いっぱいかな、武蔵境の駅前商店街がSHIROBAKO聖地としてイベントやってるんでこないだ行ってきたんですけど、少し雨で、ずかちゃん名前が読めませんでした。せっかく名前を売るチャンスなのに。がんばって!しっかり!